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目標管理制度(MBO)運用の成功のためのポイントとは。

目標管理制度(MBO)運用の成功のためのポイントとは。

目標管理制度(MBO)は目標達成度を賃金に反映させるためだけのノルマ管理の仕組みではありません。
経営目標と個人目標をつなぎ合わせ、全社員の方向性を統合し、社員の自律的な行動を促すために有効なマネジメントツールです。

目標管理制度はもともとドラッカーが提唱したマネジメントのための考え方であり、業種や企業規模を問わず広く適用が可能です。

Management By Objectives」を略し、MBOとも言われます。

ここでは、MBOを組織運営に活用するために留意するべき点について記載します。

 

MBOは、以下のような誤った考えのもとで運用してしまうと、失敗する可能性が高いので注意が必要です。

 ×【目標による管理 = 目標(ノルマ)達成度の管理ツール】

なぜなら、ノルマ管理の制度として運用すると、

・職場が数字に過度に追われて疲弊

・部下が目標値を出来るだけ低く設定する

・部下が個人の目標達成を最優先に、身勝手な個人プレーに走る

という状況になり、組織力の低下を招く可能性があるためです。

これらは、MBOの本質を誤って捉えた事で生じると言えます。

 

【目標管理の本質とは】

目標管理の本質はドラッカーが提唱した、MBOの後に続く言葉に示されています。

 「Management By Objectives and Self-control

すなわち、MBOの本質は、目標による管理、ではなく、

○【目標と自律によるマネジメント(組織経営)】

である、と認識する必要があります。

つまり、MBOとは、従業員の自律を引き出すことで、組織をマネジメントするための仕組みと言えます。

 

【なぜ、従業員の自律性を引き出す事が大事なのか。どうすれば引き出せるのか。】

現代の組織経営には往々にして以下のような課題が存在しています。

1)仕事の分業化、専門化が進み、社員を一つの方向にまとめ上げる事が難しい。

2)世の中の変化のスピードが速く、過去の経験のみに頼る事が難しい。

一握りのトップが「ああしろ、こうしろ」と指示するだけのトップダウン型の組織では、今の変化の激しい世の中に対応する事は難しいのではないでしょうか。

顧客からの信頼を勝ち取るためには、従業員一人ひとりが会社の方針を十分に理解した上で、現場の状況に合わせ自らの考えで自律的に行動し、顧客の課題を解決する事が重要です。

 

MBOを上手に活用することで、組織が以下のような状態となる事が期待できます。

Ⅰ)全社員が組織目標の達成に向けて同じ方向を目指して行動する

Ⅱ)全社員それぞれが課題解決者として、現場の変化に対応し、自律的に行動する

以下に目標管理制度を活用する上での主なポイント、考え方をご紹介します。

 

【目標管理制度活用のポイント】

1.個人の目標は組織の目標達成のために必要不可欠なものでなければならない。

MBOは全社員を組織目標の達成に向けて方向付けするためのツールです。上司が部下に目標を設定する際、やってもやらなくても組織にとって大勢に影響のない目標であれば、社員の方向付けはできません。組織と個人を「目標」というツールでつなぎ合わせるために、目標を

 全社 → 部門 → 課 → 個人

といった形で、全体から徐々に個人へとブレークダウンしていく考え方を身につける必要があります。

 

2.経営者や部門長は組織目標の明確化とその達成に向けた具体的なアクションプラン(実行計画)をしっかりと練り上げる必要がある。アクションプランを個人に割り当てたものが個人目標となる。

組織から個人へと目標をブレークダウンするにあたり、組織目標が漠然としていたり、その達成に向けたアクションプラン(実行計画)が抽象的だと、個人への展開がうまくできません。

組織目標とは「売上○円」、「利益○円」などの計数目標がありますが、それだけでは個人への展開を考える上では不十分です。その売り上げ、利益を達成するために、どのマーケットを開拓するのか、そのために自社の解決すべき課題は何か、力を入れて取り組む施策は何か、といったことを具体化、明確化する必要があります。これらが組織目標となります。

また次に、組織目標を達成するための具体的なアクションプラン(実行計画)を策定する必要があります。誰がいつまでに何をどうする、いくらで、といったいわゆる5W1Hの形で落とし込めれば良いでしょう。

なお、こうした目標やアクションプランはあくまで仮説に基づいた計画です。従っていつも計画通りうまくいくわけではありません。マネジャーにはこうした計画を立て、実行し、うまくいかなければ理由を検証して、再度計画を見直すといった、いわゆるPDCAを絶えず回し続ける役割が課されます。

このようにして策定した組織目標およびアクションプランを個人ごとに役割分担して割り当てたものが個人目標となります。

 

3.人材配置は適材適所で。部下一人一人の強み・弱みや価値観、キャリア観などを把握した上で、最適な期待役割を形成する。

マネジャーの最大の役割は、部下の強みを最大限に活かし、弱みはチームメンバーが互いにカバーし合う事で、組織のパフォーマンスを最大化する事と言えるでしょう。組織目標やアクションプランを立てたところまでは良くても、肝心の役割分担がちぐはぐなものでは目標達成は難しい。

マネジャーは日ごろのコミュニケーションや面談を通じて部下を詳細に把握し、最適な人材配置を考えなければなりません。

 

4.具体的な目標設定は測定が容易な定量目標に落とし込むのが望ましいが、それが難しい場合には定性的な目標設定でも構わない。仕事の品質やプロセスを評価したい場合には、達成したい「状態」をイメージして目標設定する。

営業担当者は目標を「売上額」や「利益額」といった数字で表しやすいと思いますが、研究・開発部門やスタッフ部門などの間接部門は数字で表現できない成果がたくさんあります。そういう場合には無理に定量的な目標を設定しようとすると、方向付けを誤る可能性があります。

例えば、ある部署で仕事が属人化していて、仕事のプロセスがブラックボックス化している点が組織の課題だとします。このままでは、担当者が突然病気で入院した時に周りがカバーできなかったり、属人化している故、仕事の仕方に多くの無駄が生じていても対処の仕様が無い、などの問題が起こります。そこで、担当者のAさんに、担当業務のマニュアルを作成し、業務プロセスを明らかにしてもらおうと考えたとします。

その場合の目標設定として、「○○業務の実施マニュアルを作成する」とするのは十分といえるでしょうか。

このままではAさんは「要するに○○業務の実施マニュアルを作成さえすればいいのだな」と考え、結果としてマニュアルは出来たとしても、その出来栄えは不十分なものとなるるかもしれません。

マネジャーにとっては、マニュアル作成そのものは目的ではなく、あくまで手段にすぎないのであって、狙うのは、属人化した仕事を明らかにし、その過程で業務の無駄を見つけ排除し、標準化する事で、誰もが対応可能なものとするところにあるのです。

このように、やったかやらないかだけを目標にするのではなく、「達成したい状態」をイメージして目標設定する事をお勧めします。例えば、

「○○業務のマニュアルを整備し、代替の社員がいつでも業務に対応できる状態にする」とか、

○○業務を効率化・標準化し、必要工数の減少、業務マニュアルの整備を行う」といった記載をすると良いでしょう。

そうすることで、目指す方向性をマネジャーとAさんが共有する事ができ、Aさんの知恵と工夫を自ら引き出すきっかけになるのではないかと思います。

 

4.「目標」と「手段」の取り違えに注意する。

 上記3.で述べた事と重なりますが、目標設定をする際に良く陥る誤りとして、「手段だけ」を設定してしまう事が起こります。手段か目標かは一見分かりにくいので注意が必要です。「目標」と取り違えて「手段」を設定してしまうと、部下の方向付けに失敗します。

一つ、例をあげましょう。

【手段だけの目標の例】

 ・毎週進捗確認のミーティングを行う

 ・○○サービスをPRするダイレクトメール3,000通を発送する

これだけで果たして部下の方向付けがうまくできるでしょうか。

毎週進捗確認のミーティングを行って、どういう状態を実現させたいのか、ダイレクトメールを3,000通発送してどういう状態を実現させたいのかを部下ときちんと共有されているといえるでしょうか。

ややもすると、目的意識が不明確なまま毎週ミーティングに時間がいたずらに費やされる、訴求ポイントが不明確にも関わらず、とにかくダイレクトメールを作成して発送する、というような事態が起こらないとも限りません。

 

これを例えば以下のように表現するといかがでしょうか。

【実現させたい状態を織り込んだ目標の例】

 ・プロジェクトの品質・コスト・納期を計画の範囲内で完遂する。そのための情報共有徹底、課題解決策検討のため、毎週進捗確認のミーティングを実施。

 ・○○サービスの問い合わせ40件、受注5件、売上○○円を達成する。そのためにダイレクトメール3,000通を発送。

上記のように、実現させたい状態を上司と部下とできちんと共有する事で、部下の方向付けを適切に行う事ができます。

 

5.個人の目標水準は簡単すぎても、難しすぎてもいけない。達成のためには本人がPDCAサイクルを回す必要のある水準で設定する。

MBOの目的は、部下の自律的行動引き出す事にあります。そしてそのためには、現状維持レベルの目標ではなく、ある程度ストレッチしたものを設定する必要があります。現状と目標との間に乖離(ギャップ)が生じる事で、自ら解決するための自律的行動が促されます。言葉を変えると、頭を使って工夫して何とか達成できる水準の目標水準を設定する必要があります。

なお、人間は現状の110%~120%位の水準の目標を立てるとやる気が高まる、といった心理学における研究結果もあるそうです。

 

6.期初に立てた目標の進捗状況は期中に何度も確認をする。マネジャーからのこまめなフィードバックが制度運用のカギ。

期初に目標を立てても、マネジャーがその後放っておいたら部下の目標達成は危ぶまれます。また、放っておかれたら、少しすると、部下も本気で目標達成に向けて取り組もうという気持ちが薄れます。

マネジャーは手遅れにならない頻度で定期的に進捗確認を行い、予定と実績との間に乖離が生じていたら早めに手を打たなければなりません。例えば毎週の定例ミーティングでの確認であったり、月末に確認したり、あらかじめ進捗確認を予定に組み入れると良いでしょう。

部下の自律行動を促すためには、マネジャーは「なぜできない、ああしろ、こうしろ」ではなく、コーチ役に徹するべきです。今までのやり方を疑い、どうしたらいいかを部下に考えさせる、そうして積極的にチャレンジさせて、最終的な責任はマネジャーが負う事を明確に伝える。そういったリーダーシップを発揮し続ける事で、部下は勇気づけられ、PDCAサイクルが回りだし、どんどん難しい課題に立ち向かう人材へと育っていってくれるでしょう。

マネジャーは期中のこまめなフィードバックを部下に与え、部下に成果を上げさせ続ける事が重要な仕事となります。

 

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以上、MBO活用のための主なポイントを述べさせて頂きました。MBOは部下の自律性を高め、組織目標の達成を実現する重要なマネジメントツールです。

是非、MBOを上手に活用し、個人と組織の更なる成長を実現させて下さい!!

 

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