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ヒト基準と仕事基準の人事制度の違いと注意点は

ヒト基準と仕事基準の人事制度の違いと注意点は

年功序列型の処遇制度からの脱却を考える場合、ヒト基準から仕事基準へと、人事制度の考え方を変える事を検討しましょう。

いわゆる「日本的雇用慣行」3点セット

「終身雇用」「年功序列型賃金」「企業別労働組合」

これらは崩壊しつつあるとも言われてはいるものの、現実にはまだ多くの会社に根付いています。特に成熟産業では、年功的に年々上昇する賃金が経営上負担となり、人事制度を変えるべきといった課題認識はあっても、実際にはなかなか手がつかられない会社も多いと思います。

年功序列型賃金は、時間の経過と共に、社員の平均年齢・勤続年数が高まっていき、人件費を増大させる事となり、年々経営を圧迫するリスクがあります。

また、高年齢層の高い報酬を支えるために、若い世代の報酬を抑えざるを得ない点も大きな問題です。社員が定年まで勤め続ける事を前提とするなら、若い世代も、将来の報酬上昇に期待を持てるため、モチベーションを維持する事も可能かもしれません。しかし最近は定年までの勤務を前提としない若者も多く、転職市場もかつてと比べると格段に発達しており、そうした中で若者の報酬を無理に低く抑える事は、モチベーション低下、早期離職に繋がりかねません。

そこで、年齢や勤続年数によらず、実際の担当する仕事の価値を基準にして、処遇を行う事の重要性が増しています。

 

伝統的なヒト基準の処遇制度「職能資格制度」とは

これまで、多くの日本企業で採用されてきたと言えるのが「職能資格制度」です。この制度は、主に人の能力面に着目しており、最大の特徴としては、「実際に担当する仕事内容」と「処遇」とを分離した点にあると言えます。

職能資格制度においては、処遇は「仕事内容」には直接連動せず、「職能等級(社員5級とかM2級とか、会社によって呼び方は様々)」によって処遇が決定されます。例えば「営業部長」や「経理課長」など、仕事内容が異なっていても、仮に職能等級が同一なら、処遇も基本的には同じとなります。

従業員に担わせるべきポストが社内に不足していても、能力の上昇に応じて社員等級を上昇させる事で処遇を高めていく事が可能であり、結果として従業員のモチベーションの維持を図る事が可能なところに利点があると言えます。また、仕事内容が変わっても処遇が影響を受けませんので、日本企業に良く見られるジョブローテーションによる従業員育成に適した制度と言えます。

しかし、実際の制度運用の現場では、人の能力というものが目に見えず、客観的に図りにくい事から、年功的に昇格を繰り返してしまい、年功序列的賃金に陥る傾向が強く、この点に制度上の問題があると言えます。また、人の能力というものは、一度獲得すると基本的には下がらない、よって降格もあり得ない、との前提に立って制度運用されることが多く、企業の環境変化等により、能力が陳腐化しても職能等級が下がらず、報酬が維持される点も、経営上大きな問題となり得ます。

まとめると、この制度の問題点は

1.「職務遂行能力」という目に見えず、測定しづらいものを処遇の基準としている。

2.一度獲得した「職務遂行能力」は無くならないという前提が置かれている。→降格する事はない(仮に能力を喪失しても、目に見えないため、客観的な証明が困難)

という点にあります。

目に見えないものを処遇の基準とするため、必然的に年功的な運用に陥りやすい宿命を持った制度と言えます。

 

仕事基準の処遇制度「役割等級制度」とは

仕事基準の処遇制度とは、仕事の内容によって処遇を決定する、ということです。例えば営業部長には営業部長としての処遇を、経理課長には経理課長としての処遇を、というもので、仕事内容と処遇を連動させる事となります。

仕事基準の制度をつきつめると、「職務給」にたどり着きます。

会社の中には開発、営業、企画など様々な仕事があり、役職もいろいろとありますが、それらの仕事内容をすべて洗い出して定義付けし、その職務価値に応じた報酬を支払うというものです。

仕事の価値に応じた報酬を支払うという点で「職務給」は非常に合理的な考え方を持っており、世界的には最もポピュラーな考え方であると言えます。しかし、日本においては正社員は終身雇用を建て前に、職務無限定な働き方を中心としており、職務給が馴染みにくい点から、なかなか導入しづらい面がある事も否めません。

そこで、いわば「日本版 仕事基準の処遇制度」として注目されている考え方が「役割等級制度」です。

「役割等級制度」はイメージとしては、「職能資格制度」と「職務給制度」の中間に位置する制度と言えます。

基本的な考え方としては、社内の個々の仕事を大ぐくりに「役割」として捉え、それぞれの役割に求められる仕事内容を「役割等級」として定義します。

例えば、人事、経理、総務といった仕事内容を「管理スタッフ」のような大ぐくりの職種に捉えた上で、「管理スタッフ」を複数の等級に分けて、それぞれに求められる「役割」を定義していきます。

出来上がる役割等級定義書はどちらかというと「職能資格制度」の等級の定義に似ます。

しかし、大きく違うのは、「職能資格制度」の等級基準が人の「能力」に着目するのに対して、「役割等級制度」は「役割=仕事内容」に着目する点です。

従って、等級基準を記載する時に、「職能資格制度」は一般的に「~できる」という記載になりますが、「役割等級制度」では、「~している」という記載になります。従って、制度運用の場面でも、職能資格制度とは異なり、役割等級制度では、社員の担当する役割が変動すれば、必然的に等級も変動し、よって担当する役割が下がれば当然に降格も予定された制度である、という事ができます。

 

「役割等級制度」導入にあたっての注意点

「役割等級制度」は一見、「職能資格制度」と類似した設計となります。そのため、比較的スムーズに制度設計できる事が多いですが、注意点もあります。

それは、「役割等級制度」があくまで仕事を基準とした処遇制度であって、「職能資格制度」における、人の能力を基準とした制度とは考え方が大きく異なる、という事です。

「職能資格制度」では、例えば滞留年数と過去査定などを確認しながら、滞留による経験蓄積を能力向上とみなし昇格させるといった運用にも一定の合理性があります(というか、能力が客観的に測定できないので、どうしてもそういう運用になりがちです)。従って、例えば「○年滞留したら昇格を考える」といった運用も一つのやり方だと思います。逆に、「最低○年は滞留しないと、昇格はない」といった考え方もあります。また、人の能力は一度獲得したら無くなる事はない、という考え方から、降格は原則として行われません。

一方で、「役割等級制度」はあくまで「仕事内容」を基準とした制度です。仕事内容は測定可能です。そのため、仕事内容がレベルアップしない限り、昇格はいつまでも行われません。逆に毎年仕事がレベルアップすれば、毎年昇格したり、飛び級も行われる事があります。一方で仕事内容がレベルダウンすれば、降格が行われる事も当然に起こり得ます。

 

要するに、「役割等級制度」を導入すると、「職能資格制度」のときと比べて、昇格・降格の運用が大きく変わる事となります。年功序列的な運用が、仕事基準の処遇に切り替わるのですから、当然の事と言えます。

ただし、制度のバリエーションはいろいろと考えられます。例えば、一般社員層は能力基準の制度を残しておき、管理職層にのみ仕事基準の制度とするなど、「職能資格制度」と「役割等級制度」を組み合わせた、ハイブリッドな制度なども考えられます。

 

制度導入にあたっては、会社の現状とあるべき姿を経営陣がしっかりと議論し、方針を明確にする所から始まります。また、社員にその方針を丁寧に説明し、納得を得る努力をしなければなりません。全てはそこから始まると言っても良いでしょう。

 

以上、「役割等級制度」に関する基本的な考え方をご説明しました。

人事制度改革に関する相談やお問い合わせがありましたら、是非ご連絡をお待ちしています。

 

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