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在宅勤務における労務管理:フレックスタイム制と事業場外みなし労働時間制

在宅勤務における労務管理:フレックスタイム制と事業場外みなし労働時間制

新型コロナを契機に、企業規模、業種を問わず、急速にテレワークを活用した在宅勤務の普及が進んでいます。その背景には、目先のコロナ対応もそうですが、根本的な日本の抱える課題として、急激な少子高齢化、共働き世帯の増加など、日本の構造的問題があり、在宅勤務は今後も主要な働き方の一つとして定着するものと考えられます。

さて、在宅勤務においては、勤務形態をどうするかが問題となります。なぜなら、始業終業時刻、休憩時間が固定された通常の勤務形態では馴染まない面があるためです。そのための対処策として、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制といった、柔軟な勤務形態の活用が挙げられます。

以下では、それらの勤務形態のメリットや留意点などについて、記載します。

在宅勤務に通常の勤務形態がマッチしずらい理由

在宅勤務は、自宅で業務を行うので、事務所とは違い、業務中にプライベートの時間が入り込みやすいです。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 在宅勤務中に小学生の子供が学校から帰宅したので、対応
  • 子供が具合が悪く学校を休んだので病院に連れていき、その後看病する
  • 役所に、行政手続きをしにいく
  • 宅配便が届いたので受け取る
  • 雨が降ってきたので洗濯物を取り込む
  • PTAの会合に参加する

「通常勤務」は当然、就業規則などであらかじめ定められた始業時刻から終業時刻までの時間内は職務専念義務があります。

しかし、現実問題として、在宅勤務中にこれらのプライベートタイムを一切禁止する、というのもまた難しいでしょう。

以上を踏まえると、在宅勤務における「通常勤務」には次のような課題があると言えます。

  • 業務時間中は本来プライベートの用事を行う事は認めるべきでないが、在宅勤務という特性上、現実問題として一定程度は認めざるをえない。
  • 業務時間中のいわゆる「中抜け時間」の取扱いをどうするか。
  • 業務とプライベートが混在し、正確な労働時間の測定が難しくなる。
  • 上司の目が届かない場所での人事考課をどのように行うのか。公平性をどう担保するか。

上記のような課題を踏まえて、在宅勤務に一定の効果を発揮するとされる2つの柔軟な勤務形態、「フレックスタイム制」と「事業場外みなし労働時間制」を挙げ、これらのメリットと留意点をご紹介します。

在宅勤務におけるフレックスタイム制導入のメリットと留意点

フレックスタイム制は労基法32条の3で定められた勤務形態であり、従業員自ら始業、終業時刻を決定する働き方を言います。導入には労使協定の締結が必要です。

フレックスタイム制を導入すると、1日8時間、1週40時間という法定労働時間の規制がかからなくなり、例えば1日10時間働いても、直ちに割増賃金を支払う必要はなく、1カ月(最大で3カ月単位で運用することも可能)の総労働時間からその月の所定労働時間を差し引いて得た時間について、割増賃金を支払えば足りる事となります。

■在宅勤務におけるフレックスタイム制活用のメリット

フレックスタイム制の1つ目のメリットとして、在宅勤務中の「中抜け時間」に無理なく対応できる点が挙げられます。

制度運用上、始業、終業時刻に加え、休憩時間も自由に自らの判断で設定できるようにしておけば、もし業務時間中にプライベートな用事が発生しても、その時間を柔軟に休憩時間として扱う事で、労働者自らの判断で一時的に業務を離脱する事が可能となります。なお、休憩を自由に取らせる上では、休憩時間の一斉付与を除外する労使協定(特定の業種は不要)の締結も必要となります。

次に、2つ目のメリットとして、「時間の有効活用」「業務生産性の向上」が挙げられます。

そもそも、多くの労働者が在宅勤務の最大のメリットとして感じているのは、通勤時間が無くなる点にあります。仮に1日往復2時間の通勤時間がかかっていたとすると、この時間をプライベートに活用したり、副業に活用するなど、生活の質向上に大きく寄与し得るといえます(近時、副業は原則解禁の流れにあります)。

また、例えば午後にプライベートの用事がある場合、通常であれば午後半休を取得するところ、フレックスであれば、通勤に充てていた朝の時間帯を業務に充てる事で、午前中で仕事を済ませ、午後の時間をプライベートにあてるといった事も可能となります。

つまり、在宅勤務において、労働者自らの判断で柔軟に始業、終業、休憩時間を設定する事で、メリハリの利いた効率的な仕事の進め方が可能となり、ひいては「業務生産性の向上」にもつながると考えられます。

■在宅勤務におけるフレックスタイム制の留意点

フレックスタイム制には通常、「コアタイム」を設けることが多いです。「コアタイム」とは勤務日のうち、必ず勤務しなければならない時間帯を定めるものです。その目的は、すべて労働者に任せるのではなく、一定の時間帯に出勤義務を課す事により、例えばその時間帯に職場ミーティングを設定する等、職場コミュニケーションを円滑にしたり、上司が部下をマネジメントしやすくする点が挙げられます。

しかし、在宅勤務においてコアタイムを設ける事は、中抜け時間の問題を残したり、生産性向上に一定の制約を課す事も考えられます。

そこで、この点を考慮し、コアタイムを設けないフレックスタイム制(いわゆる「スーパーフレックス制」)を導入する事例も多くあります。ただし、この場合であっても、健康管理上およびコスト管理上の観点から、深夜勤務(22時~翌5時)は労働者の自由裁量で認めるべきではありませんので、フレキシブルタイム(始業、終業時刻の設定を選べる時間帯を限定する制度)を設定する事で、深夜勤務を原則禁止とするべきでしょう。

一方、スーパーフレックスを導入すと、職場コミュニケーションが支障を来たす可能性が懸念されますが、この点については、どのように対処すべきでしょうか。

始業終業時刻を従業員自ら決定するとはいえ、誰がいつ働く予定か見通しを持てなければ、職場は混乱し、連携作業にも支障を来たしかねません。そこで例えば、来週の予定を前週末までにスケジュールソフトに登録して共有する等、一定のルールを設けて制度を運用するのが良いでしょう。

在宅勤務における事業場外みなし労働制導入のメリットと留意点

事業場外みなし労働制とは、労基法第38条の2の定めに基づく制度であり、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」制度です。

つまり、実際の労働時間が多くても少なくても、所定労働時間働いたものとして、賃金の計算は行われます。ただし、それらの業務が通常、所定労働時間を超える事が想定される場合は、その想定される時間をみなす事になります。さらに、みなし労働時間について、労使協定を締結すれば、協定で締結した時間がみなし労働時間となります。実務上は所定労働時間とみなす場合も、より長い時間をみなす場合も、労使協定を締結した上で、みなし労働時間を労使間で明確に合意した上で制度運用する事が多いです。

在宅勤務は事業場外での労働にあたるので、事業場外みなし労働制を適用する余地があります。

■在宅勤務における事業場外みなし労働制導入のメリット

みなし労働制においては、通常のように会社が厳格に労働者の労働時間を管理することは無くなります。もし仮に厳格に管理すれば、制度適用の要件である「労働時間を算定し難い」状態ではなくなることを意味し、みなし労働制の適用が否定されます。その結果、通常の労働時間管理のもと賃金計算しなければならなくなる点は注意が必要です(過去に遡って未払残業代を計算・支払する必要が生じる場合もあります)。

在宅勤務は上司の目が届かない場所で、しかも中抜け時間の生じやすい、自宅での勤務形態です。従って、分かりやすく言えば、業務時間中に、息抜きでテレビを見たり、雑誌を読んだりしても上司は知り得ない状態と言えます。

そうした在宅勤務の特殊性を考えると、みなし労働時間制は親和性が非常に高いと考えられます。

みなし労働時間制は、実際の労働時間=賃金、という従来の原則的な考え方が崩れる事を意味します。長く働いても短く働いても、残業代は変わりませんので、一般的に、出来るだけ短い時間で効率的に成果を生み出すインセンティブが働きます。そうした観点から、生産性の向上にも資すると考えられます。

■在宅勤務における事業場外みなし労働制の留意点

留意点の1つ目は、在宅勤務の適用が法的に認められないケースがある点です。

事業場外みなし労働制は既に述べた通り、大きくは2つの要件「①事業場外で業務に従事」「②労働時間を算定し難い」を満たす必要があります。在宅勤務であれば、基本的に①の要件は満たされますが、②の要件が問題となり得ます。

例えば、上司が部下に対して随時、携帯電話やメールで、個別具体的に業務指示を発し、また、それらの指示に部下が即応する事を求める場合、上司は部下の勤務実態を把握しているといえます。したがって、「労働時間を算定し難い」状態には当たらず、事業場外みなし労働制の適用が否定される可能性が高いと言えます。

事業場外みなし労働制を適用する上で、上記のリスクを回避するためにはどうすれば良いでしょうか。基本的に業務の進め方について、かなりの部分を労働者の裁量に委ねる事が重要です。上司から部下に対して仕事を依頼する時は、「今回依頼する業務の目的、成果物イメージ、達成基準、期日」などを指示するにとどめ、具体的な日常の仕事の進め方は部下の裁量に任せる、といった進め方が必要です。

また、メールや電話で連絡をしても、必ずしも即応を求めないで、部下の反応に一定のタイムラグを許容するスタンスも重要と言えます。業務日報などで細かい業務時間、休憩時間を報告させることも避ける必要があります。

ただし、一方で会社には、みなし労働制適用者であっても、安全確保措置(長時間勤務者に医師の面接指導を受けさせる等)を講じるために「労働時間の状況の把握」が義務付けられています(安衛法第 66 条の8の3)。これは「労働時間」そのものとは異なるものとされており、例えば在宅で勤務し得る時間(途中の中抜けなども含めた時間数)を労働者の自己申告などにより把握するものとされていますので、その違いに注意が必要です。

以上は「労働時間を算定し難い」状況を担保し、法令に適合した制度適用を行う上で重要な考え方と言えます。

まとめると、事業場外みなし労働制は、在宅勤務に非常にマッチし得る勤務形態と考えられますが、一方で労働者の業務遂行において、労働者にかなりの裁量を与える必要があると言えます。そう考えると、適用対象者は一定のスキルや経験をもった人に限定するなど、適用範囲にも留意が必要です。

留意点の2つ目は、人事考課に関してです。

事業場外みなし労働制を適用すると、実際の労働時間に関係なく賃金が計算されます。従って、通常の勤務形態に比較して、より一層、高い成果を生み出すものには、相応の報酬を支払うよう留意する必要があります。そうしなければ、優秀な労働者ほど、モチベーションが下がる懸念があります。

そのため、成果物や日常の業務行動をどのように評価するかといった、人事考課の仕組みづくりが非常に重要になります。等級制度や目標管理制度、昇給、賞与の仕組みなどをしっかり整える事は、みなし労働制を適用する上で検討すべき点と言えます。

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